Probabilistic Robotics - Chap.9 Occupancy Grid Mapping
9.1 Introduction
今まではロボットが動作を開始する前に、環境地図が既知であることを仮定していた。ただこれは現実世界では稀なケースである。そこでロボットが自律的に環境地図を知る必要がある。ただし、環境地図の獲得には、下記2つの理由から困難な課題の1つである。
- 地図の候補空間は巨大である
- 地図を得ることは"鶏と卵"の問題がある
困難度合いを決める要因には、下記4つがある。
- 地図のサイズ(地図を作る上で対象となる空間の大きさ)
- 認識・動作におけるノイズの程度
- 認識の曖昧さ(特徴量が少ない、似たような光景が広がっているなど)
- 周回路(ループクロージャの問題)
本章では、ロボットの姿勢は既知と仮定(問題)。Grid Mappingは、ロボットの姿勢が既知という仮定の元、ノイズを含む不確かなセンサデータから環境地図を生成する技術である。地図中の各Gridは、かのどちらかの値を取る。どちらの値を取るかは、近似的に実装する事後確率で表現する。
Occupancy Grid Mapは、SLAMやパスプランニングに使うことは少ない。
9.2 The Occupancy Grid Mapping Algorithm
環境地図に関する事後確率は
で表される。ここでは、計測開始後から現在までのロボットの経路(各時刻でのロボットの姿勢)を、は計測開始後から現在までのセンサデータを、それぞれ表す。
なおOccupancy Grid Mapは一般的に2次元の地図を表すが、何層にも重ねることで3次元の地図を形成することもできる。ただし計算コストが膨大なため、通常Occupancy Grid Mapで3次元地図は構成しない。
環境地図は、沢山のセルで構成されることから、
とできる。このとき、とする。
式(9.1)の問題は、次元数である。もしも地図が10,000個のセルで構成される場合、地図の次元はとなる。そのため、地図がセルの集合体だと考えると、計算量が膨大となる。
そこで標準的なOccupancy Grid Mapは、各セルに注目して事後確率を計算する。つまりを計算し、
のように統合することで、環境地図の事後確率を求める。
Occupancy Grid Mappingでは、各グリッドの状態を表すのに下記式(9.5)で表される対数オッズを使う。
対数オッズを使うメリットは、事後確率が計算結果が不安定になる0、1の近傍を取らなくなることである。
なお式中のは、対数オッズで表現されるOccupancy Grid Mapの事前分布で、
とする。ここで、であり、
である。
なお、Occupancy Grid Mapを作成する時は、ロボット自身が専有する領域(ロボットの身体)を考慮することは大切である。特に通行人が多いとき等には有用である。
9.3 Learning Inverse Measurement Models
9.3.1 Inverting the Measurement Model
Occupancy Grid Mapは、各セルの逆観測モデルが必要である。
Table9.2ではとりあえずの逆観測モデルを定義した。
ここでいう逆観測モデルは、複数のマップを用意し、それぞれのマップのを満たすマップを使って逆観測モデルを近似する。つまり、
となる。上記の式は計算不可能のため、ロジスティクス回帰やニューラルネットワーク等の教師付き学習アルゴリズムを使って近似的に求める。